「フィールダースチョイス」は審判のコールはなく、スコアラーの判断で記入します。
スコアラーの判断で記入するというのは初心者にはハードルが高く、筆者も本を何冊も購入して調べるしかなく、ずいぶん遠回りしました。
ところがこの「フィールダースチョイス」の意味を、学年が上がってきた子供たちのほうが親よりも習得しています。ということは、彼らのようにシンプルに考えればいいということがわかります。
ここでは「シンプルに考える」ということに徹して説明していきます。慣れるとむずかしくはありません。
記号
FCであらわします。Fielder’s choiceと書き、プロ野球の公式野球規則では「フィールダースチョイス」と表記されています。
一般的に使われるフィールダースチョイス(野手選択)
公認野球規則では4つの項目をあげて記載されています。しかし初心者には理解しにくいことや、現実的に適用されていない項目であるため、ここでは広く使われているフィールダースチョイスをあげておきます。
一塁に送球さえすればアウトにできたのに、他の塁へ送球した
と、いう野球中継でよく見られるケースで一般的な「フィールダースチョイス」です。
- フェアのゴロを扱った守備側が、二塁へ送球したがアウトにできなかった(※二塁への進塁阻止のために、そのランナーを先にアウトにしようと考えた)
- つづいて一塁へも送球されたがアウトにできなかった。
- 結局、どこの塁もセーフになってしまった
具体的にスコアであらわしてみます
- 1番バッターがショート内野安打で一塁へ
- 2番バッターがピッチャーゴロだったが…
- ピッチャーは2塁へ向かったランナーを先にアウトにするため、2塁へ送球したがアウトにできなかった
- 2番バッターはゴロで本来ならアウトのはずであったが、先に2塁へ送球されたため、1塁バッターはセーフ
ピッチャーが判断上のミスをした(→先に2塁へ送球したため、1塁バッターはセーフ)ことが原因であるから、2番バッターの記録に1FCと記入します。
ピッチャーは2番バッターを打ちとっているからね
だからHはつけられないと考えたらいい
そうです、セーフだからといっても、ヒットとならないケースです。ピッチャーはゴロを打たせることに成功しているのにもかかわらず、H(ヒット)が記録されてしまうのは正しくありません。
他の塁に送球してもフィールダースチョイスにならないとき
上の図のケースでアウトをひとつでもとれた場合は、2番バッターの記録はFCではないとします。ここで下の例の1.と2.をみてください。1FCではなく、赤い文字で示しているように記録されます。
- [ピッチャーはゴロを捕球後、1塁のファーストへ投げてアウトにした] 1-3でアウト
- [ピッチャーがゴロを捕球後、2塁のセカンドへ送球してアウトにしたあと、ファーストがいる1塁もアウトなら] 1-4-3のDP(ダブルプレー)
- [ピッチャーはゴロを捕球後、2塁へ投げたがセーフ、バッターも一塁セーフ。どちらもセーフでFCとしたいところですが、仮に先に1塁に送球されていても余裕のセーフだと判断すれば] 1の内野安打
FCは消え去り、正しく打撃の成績を記入していきます。
スコアラーの判断が必要になる3.をていねいに説明します。
上の図の例で、先に1塁に送球されていたとしても、2番のバッターは内野安打の余裕のセーフだったと判断すれば、安打Hの記録です。(たとえば、大きくバウンドしたゴロは、足の速いランナーは一塁セーフになりやすいなど)
2番バッターはうまくヒットを打てたので、H(ヒット)です、この記録は正しく記入しましょう
このようにスコアラーは、(先に1塁に送球されたと想定したとき)バッターがゴロでアウトだったか、余裕で1塁に間に合うヒットであったかを見ています。
それはピッチャーが打ち取ったのか、ヒットを打たれたのかという記録にもかかわってくるからです。
スコアラーは「一塁に先に送球さえしていれば、ピッチャーがバッターを打ちとっていたはず」と判断すれば、FCと記入すると覚えます。反対に「一塁に先に送球しても、バッターはセーフだった」と判断すれば、ここでは内野安打Hにするのが正しい記録です。
もうひとつ初心者にまちがいやすいケースがあります。
すべてのランナーがセーフであればFCと記憶していても、送球エラーや落球があったときは、それはE(エラー)の記録になります。FCの記録はつきません。
盗塁に気がつかない無関心な守備
少年野球に多くあるケースで、例として次のようなものがあげられます。
- 盗塁に気がつかなかった
- 気がついたが、送球しなかった
具体例で説明します。
- 1番バッターがショート内野安打で一塁進塁
- 1塁ランナーは2塁にベースカバーがいなかったために、すばやく進塁した
- キャッチャーはランナーに気づくのが遅れて、投げられなかった
進塁したので盗塁Sとするか、無関心の守備を適用すればFCとなります
この判断もスコアラーがします。難しいですが慣れてきたら、「ランナーはここで動くはず」と心の準備ができているので、判断が容易になります。
2つのケースのFCのスコア図は同じにみえる…
ふたつの上図に、ランナーをアウトにできなかったケースと無関心のケースのスコアがしめされていますが、両方の違いがありません。あとで見返しても、どういったFCだったかわからなくなります。
決まっている記号はありませんが、無関心の守備のケースに(無)や(ム)をつけるなどして区別するとわかりやすい記録になります。チームで統一していると混乱しませんし、どんな記号でもOKです。
あと、2FCかFC2か迷いますが、どちらでもチームで統一されていいと思います。この記事では、多く採用されているほうを図に示しています。
- E(エラー)は技術に関する失敗
- FC(フィールダースチョイス)は判断の失敗
補足:公認野球規則より
フィールダースチョイスに関しての規則はあります。ご参考までに載せておきます。
むずかしいので、さらっと見るだけで十分です。
- フェアのゴロを扱った野手が、打者走者を一塁でアウトにする代わりに、前を走る走者をアウトにしようとして、ほかの塁に送球する行為
- 安打を打った打者が、野手が前を走る走者をアウトにしようとして他の塁へ送球する間に、余分に進塁した場合
- 走者が、盗塁や失策(エラー)によらずに、自分以外の走者をアウトにしようとして野手が他の塁へ送球する間に、余分に進塁した場合
- 盗塁に関して守備側が無関心のために何も守備を行わないために、走者が進塁した場合
現状でつかわれている記録は以下のとおりです。
- 1.のケースは「野手選択」
- 2.3.のケースは「送球間の進塁」「内野ゴロの間の進塁」
- 4.のケースは「野手選択」
この記事では、現実的に適用されている1.と4.についてを説明しています。
まとめ
簡単に記入するためには、現実的に適用されているものだけを覚えるのがよいです。
- 「すべてのランナーをアウトにできなかった」
- 「守備側の無関心」
このふたつのケースのときに、フィールダースチョイスが適用されると考えるのがよいでしょう。
このようにスコアラーの判断で記入するという、むずかしい項目です。初心者の範囲を超えてきました。
それでも少年野球の練習試合でよく見られるケースなので、まずはゆっくり理解をすすめてください。慣れてきたら、何がむずかしかったのか?というくらい、簡単に判断できるようになります。ご安心ください。
すぐ忘れても構いません。ルールも記号も忘れるのはあたりまえと考えて、何度も確認すれば記憶も定着します。スキマ時間が5分くらいしかなくても実際の試合や、テレビ中継で練習できます。気楽に練習してみてください。
スキマ時間5分から10分くらいで、野球中継などでスコア練習できます
これからは、いろいろなスコアの本を読んでも理解が進みますし、いろいろな視点で説明してくれています。どれもよい本ばかりですから、書店やネットなどでもご覧になってください。
持ち運びやすい文庫版もあります。